*** 愛という記号 ***
ヒトとは地球という惑星に生息する低次元な生命体で
百年かそこらしか生命機能を維持できないのだそうだ
言葉というきわめて不確実な手段でしか記録ができず
少し前の過去の事実さえ誤りなく把握することは困難であるのだそうだ
身体機能的にも劣悪な生命体で
自身には音速どころか風速ほどの移動能力もないのだそうだ
だが聞いた話によると
彼らは時間と空間を超えるすべを心得ているという
一瞬の出来事を永久不変の真実と解釈したり
あるいは一定期間持続した事柄でも一瞬に満たない内容として処理したりする
遠く離れたヒト同士が意思を相互に通わせることでその物質的隔たりを意識しなかったり
あるいは日常的に接しているヒト同士でも激しい距離感を覚えたりする
ヒトが愛という記号を用いるとき
この驚異的な現象がみられるようだ