又新

 出典は中国古典である四書のひとつ『大学』の一節「湯之盤銘曰、苟日新、日日新、又日新」。読み下すと「湯の盤の銘に曰く、苟(まこと)に日に新たに、日々に新たに、また日に新たなりと」。
 湯は夏を滅ぼし殷(商)を創始した湯王のこと。名君の誉れ高い。盤はたらいのようなもので、洗面や手洗いに使う。湯王が自分の盤にこの句を刻みつけさせ、毎日顔や手を洗うときにそれを見て己に言い聞かせていた、というようなことらしい。
 見る人によっていろんな解釈のできそうな言葉ではある。
 とりあえず、北宋の時代に司馬光(1018〜1086、政治家・歴史家。『資治通鑑』は有名)がほどこした注釈によると「君子の学は、必ず日に新たなり。日に新たなる者は、日に進むなり。日に新たならざる者は、必ず日に退く。未だ進まずして退かざる者はあらざるなり」とのこと。
 ちなみに全然関係ない話だが、「殷」という王朝名は続く周の王朝が後に付けたもので、本人たちは自らを「商」の民と呼んでいた。商人という言葉のルーツはこの「商の人」の意のようだが、彼らがあきないに長けていた人々だとかいうのは特に聞いたことがない。

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